現在私が所有している大判カメラは2台、これまで長年山で苦楽を供にしてきた「HORSEMAN 45HD」と「Linhof MASTER TECHNIKA 2000」です。

HORSEMAN 45HD
Linhof MASTER TECHNIKA 2000
HORSEMAN 45HDは国内の中判、大判カメラメーカーとしてたいへん有名なメーカー(株式会社駒村商会)の携帯性、超軽量コンパクトを追及した金属製テクニカルフィールドカメラです。
このカメラの最大の特徴は4×5の大判金属製フィールドカメラの最大の難点である、カメラ重量が他の4×5の金属製フィールドカメラに比べると非常に軽量にできていることだと思います。
カメラ重量がわずか1.7kg、ボデーの周りにはゴム製のラバーが貼り付けられていて、私のような山岳写真を中心にやっている者にはもってこいのカメラです。


4×5フィールドカメラに要求されるアオリ機能も、バック部のアオリは無いもののベット部の15°ダウン、レンズスタンダード部は、ライズが28o、スイング左右各15°、チルトが前10°後15°、シフトが左右各30o、蛇腹の伸長量が249oで最大フランジバックが249o、バック部の縦横切り替えは差し替え式になっており、山岳フィールドには十分な仕様になっています。
各可動部の精度も非常に高く、非常にコンパクトにまとめられたレンズスタンダードブの動きも硬すぎず柔らかすぎなくそれでいてロックをすればガタも全く無く、このカメラの優秀性を物語ります。


ただ、コンパクトで軽量に作られているがゆえに他の4×5のフィールドカメラとは違う使いずらさも確かにあります。
上の写真でMASTER TECHNIKAと見比べても解ると思いますが、各アオリのロックをするネジの部分の頭が小さく冬場の手袋をしたままでの操作がやりづらい、又それらのネジを含めてパーツ一つ一つのサイズが小さいため力を入れすぎたりすると不安がある。
ライズアオリの操作が手で持ち上げるので細かなアオリ量の調整がしにくい。
最大フランジバック量が他のフィールドカメラに比べると短く、私が持っているレンズではFUJINON Apochromst 1:9/240oとTele-Type 1:8/400oが凸型テレタイプ用レンズパネルを付けて最大であり、アポ・ロナー300o用レンズパネルを付けてもCompact 1:8.5/300o止まりです。
それに、これら凸型のボードを付けると、カメラ本体の三脚取り付け穴が本体下に一箇所しかなく、蛇腹を伸ばした状態ではたいへんバランスが悪くてブレの危険性が増します。
45HDの上位機種で45FAがありますが、こちらは三脚ネジが3ヶ所にあり内一箇所はドロップベットの真ん中についていて蛇腹を伸ばした状態のときはそこに三脚を付ける事により全体のバランスが良くなります。
私はドロップベットの真ん中に三脚ネジを取り付け加工しようとも考えましたが、自分の体の一部になったカメラにドリルの刃を当てることにためらいを感じてできませんでした。
そこで私は、一つの三脚に二台のカメラをセットすることができるプレートを加工して蛇腹の伸ばし量に合わせて三脚の取り付け位置を自由に変えられるようにしました。
これを使用すると、400oをセットしてもこれまでのように神経質にならずにすみたいへん重宝しています。



それから非常に軽いカメラではありますが軽いが上の問題もあります。
4×5の大きなホーマットになると35oや645などのフォーマットカメラに比べたいへんブレに対して敏感になります。
非常に不安定なロケーションでの撮影を余儀なくされる山岳写真においては撮影のたびにブレとの戦いと言ってもいいでしょう。
これまでの私の経験ですと、同じフォーマットのカメラで不安定な条件で撮影した場合、重量が重いときと軽いときでは重くしたときの方がブレにくい経験を何度もしてきました。
後、縦横の切り替えですが、このカメラの場合はバックの差し替えにより縦と横の切り替えができます。
                   

ずっしりと重い物は多少の力を加えても微動足りともしませんが、軽い物はいとも簡単にぐらついてしまいます。
カメラも同じことが言えると思います、今流行のカーボン三脚には初めからストーンバックが付いている物がありますが、私の経験上あれはカメラブレ対策には全く効果のないものだと思います。
それどころかストーンバックに入れる重りの重量によっては返ってブレを誘発させてしまいます。
カーボン素材その物はジュラルミンなどの金属素材に比べ非常に同じ強度で見てみると質量が軽く、たいへんしなやかな性質を持ち合わせていますが、このしなやかな特性が三脚に向いていないと私は考えます。
例えば、カーボン素材の三脚にストーンバックを取り付けバックの中に重りを入れたとします、当然三脚は重量を増して一軒安定したかのように見えますが、ストーンバックは三脚の脚の部分に引っ掛けるように付けますね、ストーンバックの重量が三脚の脚の中央部に近いところに集中してかかることになり、足をたわませる原因になります。
しなやかな特性を持つカーボンのパイプは横方向の力が加わるといとも簡単にしなります、これはアルミのパイプでも同じことが言えると思いますが、カーボンの場合しなり始めるとスプリングのような振動が出やすくなることが多く、実際私もこのことに悩まされたことがあり大型のカーボン三脚を持っていますが大判にはそれ以来使用していません。
では、もっと太くて大きくて頑丈なカーボン三脚を使えばいいとお思いでしょうが、上記の条件を満たすカーボン三脚は質の良いジュラルミンでできた三脚よりかえって重くなってしまいます。
もしどうしてもカーボン三脚を使うのであれば、ストーンバックは付けずに、センターポールの下にフックを取り付け三脚の真下にカメラザックなどを置きフックとザックをベルトでつなぎ三脚を真下に引っ張るようにしてやります。
こうする事により三脚の足3本に均等に負荷がかかりカーボンパイプの最も強い方向に近い向きに過重をかけることができますのでたわみにくくなります。
そして三脚の重心も下がり安定感も増すことができ、三脚の横にザックを置くよりも省スペースでの撮影も可能になります。
しかし、カメラその物の重量が軽いとカメラ自体がほんのわずかな負荷によりブレル事には代わりがありません、何でも軽いのが一番と言うあたりまえの事が必ずしも通用しないことがあります。
しかしながら山へ持って行くには軽いことに越したことはありません、私の場合はカメラ機材は行き先に合わせてできるかぎり必要最小限にしてよけいな物は持っていかないようにしています。
レンズは広角、標準を各1本と、望遠を2本のみ、そのレンズを入れる器は20年以上前にバーゲンで購入したプラスチック製の小型のカメラケースに入れ、カメラや露出計、フィルム、フィルムバック、レンズフード、クリーニングキットなどは防水性のあるカメラバックに入れて、登山ザックの中に入れて行きます。
そこでこのカメラで問題になるのがピントグラスがむき出しで、なにか硬い物が当るとすぐに割れてしまいます。
私は写真のようにオプションのピントフードを付けています。
                               

よく山で見かけることの多い、ラムダのザックは私も以前使用していましたが(カメラザック5型)なぜか疲れるんですよね〜!
やはり山には登山ザックが一番疲れにくくて安全のようです。
決してラムダのカメラザックが悪いと言っている訳ではありません、他のカメラバックメーカーの物に比べると山での使勝手も良く機能的に考えられて作られていると思いますが、坂を登ったり下る時って人間は前のめりの状態になります、その状態でラムダのザックのような背の低いザックなどは肩と腰のみでザックの全重量を支えることになります。
最近の大型登山ザックは、人の頭の先より高い位置にトップがきます、ザックの重心を人の背中の高い位置にすることにより背中である程度の重量を支えるようにできています。
昔私が山をやり始めた頃はキスリングザックが支流でした、背が低く横幅のあるザックです。
横幅の広いザックは体のバランスが少しでも左右にふれるとすぐにバランスを失い傾いてしまいます。
ですから、カメラを縦長の登山ザックにカメラバックなどに入れて運ぶ方が長時間の山歩きには疲れにくいと思います。
ただし、カメラザックほどに敏速なカメラの出し入れはできなくなりますが・・・。

しかし、このカメラも今ではメーカーの生産も終了してしまい、店頭に残っている在庫のみになってしまいました。
とても良いカメラなんですが残念なことです。


                                                    

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