被写界深度、焦点深度、過焦点距離、許容錯乱円、Part 3

では、「許容錯乱円」っていったい何なのか ?
Part 2ですでにお気ずきのことと思いますが、一見ピントが合ったように見える範囲(円)の事を言います。
一見ピントが合ったように見えるだけでその部分を拡大するとピントが合っていません。
本当にピントが合っている所は合焦点の距離のみで、それ以外は見かけ上の焦点と言うことになります。
人の目はとても優秀な性能を持った光学機能を持っていますが、いくら神が作られた人の目と言えども万能ではありません。
ある一定の範囲を超えると脳が許容限界を決め、それ以上は受け付けなくなります。
それがここで言う「許容錯乱円」と私は解釈しています。
当然の事ながら、人それぞれで許容限界は異なりますし、同一人物であっても環境や体調等で変化します。
一般的に、35mmフィルムで撮影し六切りに引き伸ばし場合、許容錯乱円直径=0.03mmになるそうだ。
 
「許容錯乱円」はPart 2でも書きましたが、焦点距離、絞り値(F値)、撮影距離、像の大きさ等が大きく影響します。
ここまで私の説明を読まれてきて、なにやら難しい事書いているが要するに被写界深度の事だろ ? と思われている人も中にはいると思いますが間違えではありませんが、「許容錯乱円」は写真完成体においてのピントが合っているように見える範囲で、被写界深度は撮影する被写体側のピントが合っているかのように見える深度で=ではない。

下の図は被写界深度、焦点深度、許容錯乱円の関係を簡単な図にしたものです。

図@は、レンズの有効径全てを使った時のもので、被写体位置の青点が被写体としています。
緑の円が許容錯乱円です。
図Aは、図@と同じ被写体までの距離と焦点距離で絞りを絞り込んだ状態を示します。
この図でもお解かりのように、被写界深度は被写体側のピントが合っているかのように見える範囲(深度)で、同じ焦点距離のレンズで被写体までの距離が同じの時、レンズの有効径で深くなったり浅くなったりします。
それにつれてフィルム上での許容錯乱円の径も変化します。

焦点深度は、被写界深度が被写体側の深度に対して、像面位置側(フィルム側、CCD側)のピントが合っているかのように写る範囲(深度)で、被写界深度とは全く別として考えなければなりません。
フィルム等は一見平面性が保たれているように思えますが、フィルムのサイズが大きくなればなるほど平面を保つ事が非常に困難になり、フィルムのカット中にわずかでもひずみが生じることにより焦点がずれてしまいます。
そのひずみによる影響を最小限にする為にカメラの裏蓋には圧板が付いていて、その圧板でフィルムをガイドに押し付けて平面性を保つような構造になっていますが、サイズが大きくなるとそれだけでは平面性を保つ事は難しく、焦点深度でカバーする必要が出てきます。
下の図Bは、上の図@と同じ距離の被写体で焦点距離を長くした場合で、図Cは図Bと同じ焦点距離で絞りによってレンズの有効径を小さくした場合(絞りを絞った状態)です。



図@と図Bを比べてもお解かりのように、焦点深度は焦点距離とは基本的に関係は無く、レンズの有効径と許容錯乱円が影響しています。

                                       

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