アオリの種類と特性
フィールドカメラ、ビューカメラ共にアオリの操作は、レンズスタンダード部とバック部に分かれていますが、一部のカメラではレンズスタンダード部のみのアオリ機能しか持たない物もあります。
ビューカメラはフィールドカメラに比べ構造的にアオリ量が多く自由度が優れていますが、風景などの撮影時にはカメラの構造物が剥き出しになっている物が多く又、重量も有るため運搬時の事を考慮すると風景写真にはレンズスタンダード部とバック部のアオリ機能を搭載した軽量で運搬時に外的圧力や衝撃にも有る程度対応できるフィールドカメラをお勧めします。

 アオリの基本的な特性として。
フロントアオリ(レンズスタンダード部)はピント面のコントロール。
通常のアオリを持たないカメラでは、ピント面はフィルム面に対して必ず平行になりますが、アオリを使用する事によってピント面を行為に傾けたりして画面全体にピントを合わせたり一部分だけにピントを合わせる事ができ、被写体の形状を修正する事もできます。

下の青いボックスはアオリの無い状態で、レンズと同じ高さに正方形の板を固定してピントグラスに写る形状を表したものです。

アオリなし側面 アオリなし上面
フロントチルト下 フロント右スイング
一般的なパンホーカスを作る時に使用するアオリです 奥行きの有る壁や構造物の側面をパンホーカスにする為のアオリです
フロントチルト上 フロント左スイング
建物内の天井をパンホーカスで狙う時に良く使われるアオリです 奥行きの有る壁や構造物の側面をパンホーカスにする為のアオリです
フロントライズ フロント右シフト
被写体より低い位置から見上げる場合に形状の修正に使用されます 横の長さを修正したり鏡を正面から写す時のカメラの映り込みを防いだりするアオリです
フロントフォール フロント左シフト
被写体より高い位置から見下ろす場合に形状の修正に使用されます 横の長さを修正したり鏡を正面から写す時のカメラの映り込みを防いだりするアオリです
フロントアオリで重要な事は、使用するレンズのイメージサークル(緑ライン)の大きさです。
レンズを直接動かす事により光軸が動き、イメージサークルより大きなアオリを使用するとケラレが発生してしまいます。

バックアオリは被写体の形状のコントロールと、ピント面のコントロール
ここで注意が必要になるのは、バックアオリはフロントアオリとは違い被写体の形状が変わってしまいます。
よくパンホーカスにするために使われるバック上チルトアオリをした場合、景の形状は略そのままになりますが近景は大きくなってしまいます。
バック上チルト バック右スイング
ピントグラスの上側の形状の調整に使用したり、パンホーカスにしたりするために使用する。 ピントグラスの右側の形状の調整に使用したり、パンホーカスにしたりするために使用する。
バック下チルト バック左スイング
ピントグラスの下側の形状の調整に使用したり、パンホーカスにしたりするために使用する。 ピントグラスの左側の形状の調整に使用したり、パンホーカスにしたりするために使用する。
バックアオリのメリットとしてはレンズを動かさない為に、光軸の移動がなく絶えずイメージサークル内でのアオリができる為、イメージサークルが比較的小さなレンズでもアオリができます。
通常のアオリを持たないカメラで正方四辺形の物体を斜め上から撮影すると上下が圧縮され景側がすぼまり近景側が広がり台形の形状になりピントを合わせた所以外ではボケてしまいます。
そこで、景から近景までピントを合わすために、先に景(ピントグラスの下側)にピントを合わせバック上チルトアオリで近景にもピントを合わせますが、バックチルト量に比例して近景側がより大きくなってしまいます。

(フロントライズ+チルト下)+(バック下チルト) (フロントフォール+チルト上)+(バック上チルト)
フロントライズだけではアオリがたらない場合に使用する フロントフォールだけではアオリがたらない場合に使用する
(フロント右シフト+左スイング)+(バック左スイング) (フロント左シフト+右スイング)+(バック右スイング)
フロントシフトだけではアオリがたらない場合に使用する フロントシフトだけではアオリがたらない場合に使用する
フロントライズだけではカバーしきれない高い建物を下から撮影すると上部がすぼまって写ったりします、これらの被写体の形状を修正する時にフロントアオリとバックアオリを組み合わせて形状のコントロールを行なったりする事も有ります。
ここで注意が必要になる事は、ビューカメラのヨーフリーを使用していない場合に、フロントのアオリを組み合わせた時にヨーが発生してしまいます。

フロントアオリではヨーに注意が必要。
センターから時計回りに光軸がかたむいてしまった センターより反時計回りに光軸がかたむいてしまった
ヨーが発生すると、フィルム面で被写体が斜めになってしまいます。
このヨーを防ぐには、全てのアオリをフロントで行なわずバック部で被写体の形状の調整を行ない、フロントでピント面の調整を行なうなどする必要があります。
又、どうしても複雑なアオリが必要でヨーが発生してしまう場合は、カメラアングルを変えることでヨーを軽減する事ができます。

近景から遠景までピントが合うパンホーカスをアオリで作る為には、シャインフリュークの法則」を理解しているかどうかで効率的にアオリの操作ができるようになります。
シャインフリュークの法則」を簡単に説明すると、これから合わせようとしているピント面(青ライン)の延長線とレンズ面(水色ライン)の延長線とフィルム面(オレンジライン)の延長線が一箇所で交わればパンホーカスになると言う法則です。
A B
C D
又、被写体より高い位置からカメラを構え逆アオリ(被写体の一部分だけにピントを合わせる)の場合は、上のBのピント面(青ライン)のみにピントが合います。
以上の事を基本にピント面を自由にコントロールしながら思い通りの被写体の形状をイメージ通りに仕上げる事を「アオリ」と言います。
                                                  
 
                                           
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