アオリを使ったピントの調整        

アオリの基本的な特徴は前頁で説明しましたが、一般的にアオリのみで全ての被写体にピントを合わすことは不可能です。
ピント面は一枚の板状になっており、アオリによってその板を自由に傾けたりしてピントを調整します。
ピント面=フィルム面 と言う考え方が解りやすいかもしれません。

自然界において被写体全てがピント面上に有るとはかぎりません。
景と近景までの2点は一本のラインで結ぶ事ができますが、中景に有る被写体がそのライン上に有るとはかぎらないからです。
アオリを使った場合でも、レンズの絞りによる被写界深度と組み合わせてピントをコントロールしなければなりません。
例えば、
景に高い山があり近景に低い岩、景は深くえぐれた谷になったロケーションをパンホーカスで撮影するには、遠景の山の頂上と近景の低い岩にアオリでピントを合わせただけでは、
景の谷ではピントが合いません。
いわゆる中ボケと言われるものです。


山の頂上と近景の低い岩にアオリでピントを合わせ、絞りを絞っても焦点距離の長い大判では景まで完全にピントを持っていく事が大変困難になります。
その場合は、アオリによるピント面を遠景の山の頂上より低い所に持っていき、景の谷まで
被写界深度でカバーできるようにする事が一般的です。


しかし、立体感を損なうようでは大判を使う意味が薄れてしまうと私は思います。
遠景の山の頂上も、霞で霞んだりしていれば絞込みによるピントで十分な場合が有りますが、主になる被写体がその山の場合、遠景の山の頂上から中間ぐらいまでのエッジを効かせたいときがあります。
そういった場合には、遠景の山の頂上と
近景の低い岩の1/2辺りにアオリでピントを合わせ、絞りで景に対応させます。
そうする事によって、
遠景の山と近景の低い岩のエッジがきいて景は若干エッジがなくなり、とても立体感の有る写真が出来上がります。


フロントチルトでのパンホーカス操作手順。

@ 一般的な遠景側からピントを合わせる手順。
 アオリを使って遠景から近景までピントがシャープに合った撮影をしたい場合は、基本的に遠景側からピントを合わせることがセオリーになっている。
遠景と近景との距離が大きく離れている場合は効率がよい。


A @に対して近景側からピントを合わせる。
 被写体とカメラの位置関係や距離関係で近景側から合わせた方が効率的な場合もある。


B 遠景の被写体を立たせる為にレンズをライズした場合、バック部が近景側手前にチィルトした状態になる為レンズ部でのチルトは少量ですみ、素早くピント合わせができる。
これを応用して、バック部のチィルトのみで遠景から近景までピントを持ってくることもできる。
ただし、バック部のチィルト操作では被写体の形状の変化が出る為、注意が必要になるが、レンズのイメージサークルが小さいときには光軸の移動がない為、大きなアオリが使用できるメリットもある。


どの操作手順も一回の操作だけでは満足できるピントを得る事はできないので、同じ操作を数回繰り返し要求するピント精度まで持っていく。
パンホーカス写真の場合は、各部分的に見ると何所もピントが来ているものと思いがちになりますが、画面全体で見ると全てにピントが合っている写真は立体感が薄れてしまいます。
広いロケーションでのパンホーカス写真を作る時は、自分は何が主体なのかをはっきり意識する事が重要になると思います。


                                     

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